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病院PFIの新たな展開(その1)~近江八幡市民病院の赤字報道から何を学ぶか~

マネージングディレクター 松浦 年洋

病院PFIの先駆的な事例として知られる「近江八幡市民総合医療センター」(近江八幡市民病院)がオープン2年目にして早くも巨額な赤字を出したということで注目を集めています。

24億円という赤字額が各メディアがで報じられていますが、よほどメディアにとってのインパクトがあったのか、この数字が一人歩きしてしまっている感すらあります。

こうした中、近江八幡市が設置した、同病院の「あり方検討委員会」の委員からは、「病院には不相応な贅沢な作りが建設費を増大させた」であるとか、「病院にはPFIの適用は難しい」といった過激な意見も飛び出していますが、こうした意見に対して、全く賛成できません。

同病院の経営は、他の自治体病院と比べて、とりたてて劣っているわけではありません。400床規模の病院として、医業収入は100億円程度ということですから、売上の点では全く問題ありません。

またSPCへの支払いが医業費用を圧迫しているとのことですが、最終的に24億円の赤字を計上したといっても、他の自治体病院の一般会計からの繰入額を考えれば、ことさらに大騒ぎをするような額ではありません。

各メディアでは、本事例を「PFIの失敗事例」として取り上げていますが、パブリシヴァでは、単なる「自治体病院の失敗事例」と認識しています。つまり、PFIというスキームが経営の悪化を招いたのではなく、近江八幡市の病院経営のあり方に問題があったに過ぎないということです。

同病院の赤字の原因として高額な建設費が上げられています。3千万円という一床当たりの単価は、民間病院と比較すれば確かに高額ですが、他の公立病院と比較すれば必ずしも「贅沢施設」とまではいえません。過去における公共施設における「無駄遣い」を考えれば、本事例をもって「PFIという魔法の杖が折れた」かのような報道は行き過ぎです。

そもそも論になりますが、病院自体が贅沢に作られていること自体は全く問題はありません。「あり方検討委員会」の委員からは、吹き抜けや庭園を取り上げて、病院にこんな贅沢は必要ないとの意見もありましたが、全くもって余計なお世話です。

病院施設は機能面だけを充足すれば良いのではありません。患者さんやそこで働くスタッフに与える影響についても考慮されなければならないことは言うまでもないでしょう。患者さんの入院時QOLやスタッフのモチベーションにとって良い影響を与えているのであれば、贅沢な施設はむしろ歓迎されるべきことです。つまり、贅沢なのかどうかということではなく、病院にとっての「アウトカム」という観点に留意した発言が求められると考えます。

こと経営コンサルタントと称する方は病院の経営面ばかりあげつらっていますが、こうした発言は、医療の本質を理解していないことを露呈しているに過ぎない、と指摘しておきます。

今回の報道に当たってまず考えるべきことは、病院を利用している患者さんや病院で働くスタッフに対する配慮です。経営面だけを取り上げた過剰な報道は、やみくもに不安を与えかねないと考えます。特に、「あり方検討委員会」の委員には、メディアでの発言力を十分に理解した上での慎重な発言を求めたいと思います。

さて、そうはいっても赤字経営については見直さなければなりません。

まず売り上げを増やすという選択肢を考えるべきでしょう。いくつかのオプションが考えられますが、選択肢のひとつとしては、病院機能の特化、つまり、地域にとって必要度が高く、より収益性の高い診療科目にシフトする、ということが考えられます。不足する医療機能については地元の医師会と連携して「逆紹介」という形で患者ニーズに対応していくのです。

一方で費用の面については、人件費、経費、材料費それぞれについて検討が必要になります。こと医療材料の調達手段については、十分に検討が必要だと思います。

本来、医療材料費は同病院のような総合病院の場合には、費用面に与えるインパクトは少なくありません。加えて、医療の質という観点からも、医療行為と一体として考えるべきでしょう。
同病院は、医療行為は自治体の直営というスキームをとっています。医療材料の調達に当たっては、SPD(Supply Processing & Distribution)サービスが、SPCの業務範囲に含まれていますが、本来、SPCが行うべきものであるのか、という点について検討すべきではないでしょうか。

「あり方検討委員会」の提言では、SPCとの交渉を経て、場合によってはPFI契約の解除ということも視野に入っているようですが、金銭的な交渉では暗礁に乗り上げることは目に見えています。患者さん等の不安を解消するためにも、早期の解決が求められているものと思います。

したがって、できる限り現状のスキームを前提とし、SPCが請け負う業務内容について「変更契約」を求めるという形での交渉をすべきと考えます。

パブリシヴァが最も懸念していることは、こうした事例によって病院PFIの可能性が潰されてしまうことです。
今回の問題の原因は、前述したとおり、PFIというスキームそのものに起因しているものではありません。ただし、現状の病院PFIのスキームには改善の余地が大きいと考えています。つまり、コア業務とノンコア業務を別の経営主体が行うという「英国型」の手法をそのまま持ち込んでもうまく行かないということです。

こうしたことを踏まえて、次回は、「施設」、「サービス」に「医療」を加えた、三位一体型の新しい病院PFIのスキームについて検討したいと思います。

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