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指定管理者の取消事例について~ロジカルシンキングで「全体最適化」を考える~

マネージングディレクター 松浦 年洋

指定管理者制度(平成15年施行)がスタートしてから数年が経過しましたが、すでに指定期間満了前に指定管理者が指定を取り消されるという事例が複数出てきています。

望ましいこととは、もちろん言えません。しかし、制度の導入経緯やそもそもの制度趣旨からすれば、こうした事例は驚くには当たらないと考えています。むしろ、こうした事例の積み重ねによって制度やマーケットが成熟されていくとの観点からすれば、初期の段階で、これらの事例について十分な検証が行われなければならないでしょう。

シンクタンクのレポート等では、こうした事例への自治体側の防衛策として、「契約保証金」を求めている事例を紹介しているものがあります。しかし、これだけでは何の解決策にもならなりません。

前述したとおり、パブリシヴァでは、こうした状況に対しては、「当然想定される事態」であると認識しています。取消しそのものは、自治法上もスキームとして組み込まれているからです。つまり、指定管理者制度は、公の施設の管理を、幅広く民間事業者に認める一方で、自治体に「事後のチェック」の徹底を求めている制度であるということを改めて認識する必要があります。

懸念すべきことは、こうした事例があると、指定管理者制度の導入に懸念していた団体や個人からの批判の声が強まるということです。こと、議会筋からの批判は自治体にとって大きなプレッシャーとなるため、指定管理者制度の導入機運にブレーキがかかる可能性があります。このため、繰り返しになりますが、初期の段階で十分な検証が行われる必要があると考えています。

後に述べるとおり、この問題については、協定書の締結までを含む、一つのスキームとして検討される必要があります。したがいまして、本稿では、

①取消事例を考える上での基本的な視点
②選定段階で将来的な取消リスクを回避する

の2点に的を絞って検討していきたいと思います。

取消事例を考える上での基本的な視点

まず、取消しという事態をその「前」と「後」に分けて考える必要があります。

前述した「契約補償金」は、取消しという事態が生じた「後」のことになります。自治体としては、取消しという切り札があったとしても、できる限り避けたいはずです。したがって、契約補償金について協定に定めることの必要性は制度導入に当たって検討されるべきことであるにせよ、取消しという事態を避けるための解決策ではないことを確認したいと思います。

つまり、ここで検討されるべきことは、取消し「前」にどうすべきだったのか、ということになります。

取消し「前」については、さらに、

①事前に防げるものであったのか
②防げないものであったのか

という観点からの検討が必要になります。

さらに、事前に防ぐためには、

①入り口の段階、すなわち選定段階で防げたのか
②選定段階では防げなかったとしても管理開始後に防げたのか

ということを考える必要があります。

だんだんと入れ子状態になってきて分かりにくくなってきたと思いますので、次に解決策の一例として、①の入り口の段階について検討したいと思います。

選定段階で将来的な取消リスクを回避する

入り口の段階でもっとも留意すべきことは、法人自体が倒産してしまうことです。このため、管理させようとしている施設そのものの収支計画だけでなく、法人の財務状況について検証する必要があります。

「当たり前じゃないか」と言われそうですが、実はこれが大変難しいということを認識すべきだと考えています。
財務状況について検証するということは、いわば債務の返済能力の審査に等しく、金融のプロでもその見極めに苦労しているほどです。したがって、格付けの取得を求めるのでもない限り、これまでの実績、すなわち「過去の」財務状況からしか判断できないと認識することが重要になります。

このため、法人財務について、損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の提出を求める際には、過去数年にわたって検証することが必要になります。またこの際、デフォルト(債務不履行)の危険性がないかキャッシュフローを重視することもポイントです。

以上、今回は、取消し事例について、まず検討に当たっての視点をお示しした上で、「入り口」でいかに防ぐかという観点から、選定の際のポイントのみを検討しました。

冒頭で述べたとおり、この問題は、最終的には、協定書の締結までを含む一つのスキームとして検討されるべきであると考えており、契約保証のような「部分最適」を図るだけでは不十分であることをお分かりいただけたかと思います。

パブリシヴァは、独自に標準的な協定書の例をお示ししたいと考え、現在、鋭意検討をしております。この問題については、その際に、改めて検討したいと思います。